人々が描いた「未来の世界」 -トゥモローランド(その２)-

トゥモローランドのBGM

ディズニーランドに限らず，ショッピングセンター，空港，果ては大学でもBGMは流れている．これまでBGMについて意識的に聞いたことがある，という人は少ないと思うが，いざ気を付けて聞いてみるとこの曲は何の曲だろうとふと考えてみたくもなる．「場所や時間帯によってBGMの種類を変える」というのは有名な話ではあるが，もちろんこのトゥモローランドにもそれに相応するBGMが流されている．

まずは東京ディズニーランドでいま流れている曲のLine upをご紹介しよう．

01. Moons of Saturn (Miracles from Molecules)
02. Ghosts of Venus
03. Strange Things
04. Moving Through Time
05. Liquid Space
06. Infinite Possibilities (Seize the Day)
07. There's A Great Big Beautiful Tomorrow
08. Space Kitchen
09. Now is the Time
10. The Monorail Song (Nation of Wheels)
11. Dance of the Molecules
12. If You Had Wings
13. Inversion Layer
14. Perpetual Motion
15. Circlevision 1(From Time to Time)
16. TRON
17. Traveling Thru Time
18. Circlevision 2(The Timekeeper)
19. Welcome to Tomorrowland
USパーク，香港でも流されているが，15~19は東京オリジナルである．
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現在東京ディズニーランドで流されているBGM．サムネイルはカリフォルニアのもので東京ではない．

さてこれらの曲は楽器として演奏されているのではなく，「シンセサイザー」を用いて演奏されている．ただ単に流れているわけではない．何かが交信するような音といった効果音が入っているのが特徴である．

BGMとレトロフューチャー

これもまさに「未来の世界」をイメージした効果音であるわけだが，前回に述べた「未来の世界」の基点をしっかり考えないといけない．
というのも，このBGMはもともとレトロフューチャーにリテーマリングされたアメリカのパークのトゥモローランドに導入されたBGMである．これは2003年に導入され，その後香港ディズニーランドのトゥモローランドも同じBGMが採用された．
その間東京ディズニーランドのトゥモローランドはどうだったかというと，一般に世に出回っているテクノミュージックを採用していた．
しかしその曲も古いものであり(はじめに導入されたのは1998年，曲自体は80s~90sが多い)，「一昔前で想像していた未来の世界」というような雰囲気であり，心なしか古臭い雰囲気になっていた．
そこで2007年にBGMが一新されこれらのBGMが導入されたわけであるが，あくまで「レトロフューチャリスティック」であり，モダンフューチャーがテーマとなっている東京にはあまり合わないBGMとなっている．
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2007年まで流されていたBGM．幼少期に訪れたことがあるという人はなんとなく聞いたことがあるかもしれない．

トゥモローランドのBGMから見る「新しいディズニーランド」

BGMという観点から見ても，上海ディズニーランドのトゥモローランドはまったく性格が異なる．前にも述べた通り，ここは「モダンフューチャー」がテーマとなっている．そのため，先に述べたようなBGMは使用されておらず，これのために新しく曲が作られた．
曲としてはテクノがメインではあるが，上海という土地柄，マンドリンなどを用いてアジアンテイストにも聞こえるのが特徴である．
これを作曲したのはBrian Transeau という，あまり日本では知られていないが，アメリカで有名なテクノミュージシャンである．
ディズニー・イマジニアはBTの曲をたまたま聞いた時に「これこそが新しいトゥモローランドにぴったりだ！」と思いつき，彼に打診したという．詳しくは以下のネット記事を参照されたい．(英語)
www.hollywoodreporter.com
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BGMのうちの一曲「Volcanoes」．

BGMから見るトゥモローランドの歴史

さて話を上海以外のパークで流れているBGMに戻そう．
これらの曲の中には「過去に存在していた・今存在しているアトラクションのテーマソング」が半分ほど用いられている．
(DL…ディズニーランド MK…マジックキングダム DLP…ディズニーランド・パリ)
01. Moons of Saturn (Miracles from Molecules)
→Adventure Thru Inner Space(DLにあったアトラクション)
03. Strange Things
→Toy Story(Buzz Lightyear Astro Blasters)
05. Liquid Space
→曲ではないがタイトルはSubmarine Voyage(DL)の宣伝文句
06. Infinite Possibilities (Seize the Day)
→ExtraTERRORestrial Alien Encounter(MKにあったアトラクション)
07. There's A Great Big Beautiful Tomorrow
09. Now is the Time
→Carousel of Progress(MKのアトラクション)
10. The Monorail Song (Nation of Wheels)
→PeopleMover(DLにあったアトラクション)
12. If You Had Wings
→Take Flight(MKのアトラクション)
15. Circlevision 1(From Time to Time)
18. Circlevision 2(The Timekeeper)
→Le Visionarium(MK, TDL, DLPにあったアトラクション)

というように，これまでのトゥモローランドを構成してきたアトラクションへのトリビュートもあるということがわかる．
「過去のことをよく知り，未来へつなげる」という意味も込められているのかもしれない．

(その3へつづく)